2007年4月25日水曜日

雑感 (日本の機器メーカーさん頑張ってよね)

フリーソフトやPC上の無料サービスは驚異的なペースで充実してきている。PCやネットやソフト上だけの話と高を括っていられたうちは他人事で済んでいたが、すでにそんなのんきな事を言っていられる状態ではない。テレコム業界などあちらこちらに火を放たれて息の根が絶たれるのも時間の問題かもしれないのだ。
SkypeやWindows Messengerに代表されるIMソフト、IP PBX ソフトのAsteriskなど有名どころも含め、SIPサーバーやテレビ電話会議などなど、PC上で実現可能なあらゆるサービスを実現するフリーソフトは今後ますます生まれ、そして洗練されていくことだろう。これらのソフトウエアやサービスはFSF (Free Software Foundation)やオープンソースを信奉する少々原理主義的な人々や団体がリリースする物から、一企業があえて無償で提供するものまで、その成り立ちは多彩だ。既存の機器メーカーを脅かす存在にまで成長したそれらの仕組みを企業が正式に採用する例も見られるようになり、今後この流れはますます加速していくことだろう。
しかし、その流れの先には何が待ち受けているのだろうか?
既存の機器メーカーやソフトハウスがそのシェアを減らしていくのは間違いない。無料に勝るディスカウントなど存在しないからだ。ベンダーはそれらのフリーソフトそのもので稼ぐことが出来なくとも、周辺機器と導入費、保守料さえあればビジネスに影響をきたす事はないかもしれない。メーカー系列のベンダーの中には対策を急ぐ必要がある会社もあるかもしれないが、今やメーカー系ベンダーといえども他社製品、特に海外メーカー製品を扱うことに拒否反応を示すところは少ないだろう。やはり問題は開発母体となるメーカーの生き残り策であろう。
もちろん時代の変化に呼応した動きはすでにあちらこちらで始まっている。ユビキタスやウェアラブルコンピューティングと言われると何のことか分かりづらいが、要するに組み込み系の商品郡の開発やそれを下支えするインフラの整備などもそれに当たるだろう。PCとネットさえあれば一通りいろいろな事が可能だが、それらをストレスなく使いこなすにはある一定以上のスキルが要求されるのも事実だ。ならば、Skypeを稼動させられる仕組みを埋め込んだ電話機を作ってしまって、ユーザーはそれをUTPケーブルでHUBに指すだけでいい、というような商品を作ればいいだろう。あるいは、無線LANを今の携帯網並に発達させてSkype携帯電話を作ってもいいだろう。だが、いずれにせよ今まで機器メーカーが持っていた独占的な市場形成やビジネス形態は通用しづらい世の中になっていくのは止められない。
日本のメーカーがネット機器の分野で大きく立ち後れてしまったのはRFCなどの仕様がUS主導で形成されてきた経緯から考えて致し方ないとしても、今後、このインフラの上に乗せるアプリケーションやサービス、そしてそれらを実現する組み込みデバイスの分野で立ち遅れることの言い訳は一切出来ないと肝に銘じるべきだろう。通信の世界だけに絞って眺めてみても、この国は独自仕様に強いこだわりがあることが分かる。もちろんそれは日本だけに特別なことではない。先進国で通信技術に秀でた国はいずれも独自仕様の開発に余念がない。大きな違いがあるとすれば、己の独自仕様をデファクトスタンダードへ押し上げる戦略や手管がとってもヘタクソだという点なのだと思う。
日本の技術力は今でも世界一だと私は信じている。だが、技術力だけでビジネスとして成功できるわけではない。いかに素早く、他に先んじて独自の仕組みやソフトやプロトコルを広め、業界標準と呼ばせるかが鍵となる。日本国内の市場だけを相手にチマチマやっているだけではあっという間に海外製品の波に飲み込まれてしまうだろう。インターネットの広がりが、逆に日本人を日本国内だけに閉じ込めてしまっているように感じる。英語圏内で次々と形成されていく諸々に、すでに後塵を拝している感のある日本のメーカーやソフトハウスの更なる努力を期待したい。

2007年4月23日月曜日

GoogleがMarratechのビデオ会議ソフトを買収

Google,ビデオ会議ソフトを手がけるスウェーデン企業を買収へ
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070423/269150/

>> 同社は,当初,Marratechのソフトウエアを社内向けに導入するが,将来的に社外に提供するか,あるいは自社製品と統合するかについては明言を避けた。

社内向けのビデオ会議システムのために会社をまるごと買収してしまうとは、さすがGoogle、儲けてますね、豪気な話だ。昨年末あたりだったか、Googleが社内ビデオ会議システムの構築と運用のために人探しをしているからどうかとヘッドハントのエージェントから話があった事を思い出した。その時はTandbergのプロフェッショナルを探していたようだったが・・・・

と、思っていたらCNETではこんな記事が
http://japan.cnet.com/news/media/story/0,2000056023,20347641,00.htm
>> これにより、Google利用者は、インターネット接続環境さえあれば、ビデオ会議を行えるようになるという。

ITMediaの記事は当たり障りのない速報情報しかなかった。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0704/20/news054.html

どういうことかと思って公式ブログを確認してみると
http://googleblog.blogspot.com/2007/04/collaborating-with-marratech.html

>> (Marratech software) which will enable from-the-desktop participation for Googlers in videoconference meetings wherever there's an Internet connection.

Googlersが何を指すのか知らないので何ともいえないが、Googleを使っている一般ユーザーの事っていう理解でいいのかな?

ちなみに
>> Update: To clarify some confusion, we acquired Marratech's software, not the company itself.

ITProさん、少なくともココでは「企業買収じゃない」ってわざわざ混乱を避けるためにと注記してますよ。記事は正確にお願いします。こうなってくると、俄然ITProの記事は適当な書き飛ばしで、CNETの記事の方に信憑性があるように見えてくる。

http://japan.internet.com/finanews/20070423/12.html
>> Google の広報担当者によれば、どのような形でこのビデオ会議ソフトウェアをインターネット ユーザーに提供していくかについては、発表できる情報がないという。

ようするに、Blog書いた人が先走っちゃって広報の人に叱られちゃいましたって話ですか?
そろそろ興味も失せて来たのでこのくらいで止めておこう。

2007年4月18日水曜日

一斉同報通信 SkyIPCast

NEC ネッツエスアイ、WiMAX 防災無線システム評価検証をサポート
http://japan.internet.com/allnet/20070417/4.html

記事本文に記載は無いが、NECネッツエスアイが提供するVoIP一斉同報のプロダクトといえば SkyWaveのSkyIPCastの事と考えてまず間違いないだろう。同製品はこの手の自治体における同報通信/放送システムに多く採用されているようで、ニッチな市場の中での話だがその存在感は異彩を放っている。残念ながら私はWeb等で公開されている以上の詳細な情報を知る立場にないが、顧客の要望や、Ciscoなど3rd パーティー製品とのインテグレーションを可能にする細かなカスタマイズを行いつつも、かなり低価格なのではないかと予想している。特に自治体で多くの実績を築いている模様だ。
首都圏ではあまり見かけなくなったものの、地方自治体では村や町を網羅するように拡声器を配置し、水害などの緊急放送、催し物の告知、夕刻を知らせる音楽などの配信サービスを行っている。スピーカーから流れる音声は不鮮明であったり、家の中に居ると聞こえづらかったりと言う難点があるものの、地域特有の災害告知は特に無くてはならない重要なものである。近年、これらの設備の老朽化が進みリプレース時期を迎えているという事もあるだろうし、またそれとは別の動機も相俟って、SkyIPCastへの注目が集まっているように思う。
国策として推し進められたe-Japan戦略の予想以上の成功により、ネットワークインフラは次々と増強されてきた。そして同時に地方自治体も何故か独自のインフラを構築し、増強してきたのだ。それを批判するつもりはないし、そもそも背景となる事情にも疎いのではっきりした事はいえないが、だぶついた帯域の使い道を血眼で捜している感があるような無いような・・・そのあたりの事情もあって、各家庭に端末とネットワークポートを配備し、同報通信を行うと言う発想に結びついている面もあるのではないだろうか?


中央コリドー高速通信実験プロジェクト推進協議会 (CCC21)
http://www.ccc21.or.jp/index.htm

まったく知らなかったのでちょっとだけ調べてみたら・・・
http://www.ese.yamanashi.ac.jp/~itoyo/preparation/scrap/asahi97.htm
脱力してしまった・・・
通信インフラという名の箱物行政とそれに群がる通信機器メーカーの図ってとこでしょうか?

2007年4月17日火曜日

新発売!! Polycom V700

ポリコム、データ共有機能付モニタ一体型ビデオ会議システムを発表
http://japan.cnet.com/news/com/story/0,2000056021,20347210,00.htm

今までこの手のデバイスがラインナップに無かった事の方がむしろ驚きだ
57万8千円ね・・・

リリースノートによれば、、、
>> 個人向けビデオ会議システムの出荷が、今後5年間に年平均成長率24%の割合で増加すると予想しています
>> 最近の調査では、回答者の70%が、2007年中にデスクトップ型ビデオ会議の新規導入または拡張の計画があるとしています。

との事。あくまでUSでの結果なので、日本での反応はもっと薄いと予想される。確かに日本市場においても、PBX以外の音声系システム案件ではビデオとのインテグレーションを求められる事は多いが、大抵のケースでは単なるカッコ付け、味付け的な意味合いが高いように思う。なのでお値段的にお手ごろ感のない本格派は敬遠されがちだ。USと日本では持ち出される案件も提案もかなり異なったものになる事は想像に難くない。

http://www.sony.jp/products/Professional/VIDEOCONF/products/index.html
Sony PCS-TL50 は 701,400円 / PCS-TL30 は 315,000円

http://www.tandbergjapan.com/products/video_systems/tandberg_centric_series.html
Tandberg Centric シリーズは 150万~60万ぐらいの価格帯

Polycom V700は追加モジュールやライセンスを買わずにすべての機能が使用可能なのだろうか? 使用法や要望にも寄るが、後発なだけあって戦略的な価格設定をしてきたという事なのか? ちなみに、今期からF1のスーパーアグリとスポンサード契約をしたスピーカバスも卓上ビデオ会議風ソリューションを提供している会社で、日本でも営業展開している。
http://www.mki.jp/products/manufacture/speakerbus/index.htm

今後、卓上ビデオ会議市場が日本でどの程度拡大するのか見守りたいと思う。

2007年4月4日水曜日

ユニファイド・コミュニケーション・システム VS 専用機 その2

PBXのリプレース頼みだけでは頭打ち情報系との連携商談で新市場を開拓
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070330/266979/

法人向けIP電話機器市場、06年の出荷額は9.7%増の1073億円、IP-PBXの成長鈍化
http://www.yomiuri.co.jp/net/cnet/20070330nt1a.htm

IP電話という錦の旗にかげりが見え、次なるお題目を探しているだけという気がしないでもない。目新しい物がいい物であるとは限らないのは自明の事で、専用機には専用機の良さがある事も考える必要があるだろう。

まず、専用機には長い実績の中で培われたノウハウが詰まっている。非常に効果の見えにくい部分ではあるが、長年かけて細部まで練りこまれた仕組みは業務手順との親和性も高く、長い目で見た時に大きな効果を生んでいる場合もあるだろう。そしてシステムの統合やデータベースの統一化は、何か一つのトラブルが広範囲に影響を与えてしまいかねないという危険性を孕んでいる。またバックアップソリューションやトラブル対策をキッチリ見積もっておかないと、かえってコスト高という事態も起こりうるだろう。なにより一番あり得そうなのは、その豊富な機能のほとんどを最終的には使用しないユーザーが大半を占める、というようなケースだろう。その機能郡によって従業員たちに何をさせるのか、それを徹底させるのはトップの責務だが、導入を決める段まではあーでもないこーでもない、アレが出来ないとダメ、コレが出来なきゃイヤと口煩いことこの上ない割に、導入後それがどのように活用され、どれだけのメリットをもたらしているか精査しているだろうか?はなはだ疑問である。

結局何か取り留めのない愚痴で終わるのはデフォなのか・・・

ユニファイド・コミュニケーション・システム VS 専用機 その1

ユニファイド・コミュニケーションを謳ったシステムがもてはやされているのは業務の効率化ウンヌンよりもメーカーやベンダーのマーケティングによるところが大きいのではないかという穿った見方はさておき、どちらも一長一短、プライオリティーを何処に置くかによって見方はかわるだろう。 トレンドとしては、ただの電話機やファクシミリよりもユニファイドなんちゃらの方が稟議書の見栄えがいいことは間違いない。しかし、あらゆるコミュニケーションデバイスを統合することで得られるメリットとは何か、改めて考えてみると思ったほど多くないというのが私の感想だ。

ユニファイド・コミュニケーションとは?
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20070205/260648/

・ 各種設定をPCから一元管理できる
・ アドレス帳などのデータを様々なコミュニケーションデバイス間で共有できる
・ 様々なインフラやデバイスを超えてコミュニケーションを成立できる(例えばオフィスに電話がかかってきたことが携帯メールに通知されるとか)
・ オフィスのデスクにあるPCや電話などの環境を、log on / off して自宅の書斎に再現させる。(セキュリティー上の難しさはあっても、技術的には十分可能だ)

上記の記事を読んでもらえば分かるとは思うが、「将来的にはこんな事が出来るかもね」という期待感はあっても現状可能な部分については面白味に欠けるようだ。唯一、在宅ワーカーの環境を劇的に改善させられる可能性には期待したい。この変化は働き方の選択肢を増やすというだけではなく、都市や地域のあり方、人口分布にまで劇的な変化を起させる可能性を秘めている。ただし、日本人の心性という大きな障害が取り払われるならば、という前提付きで考える必要もある。コミュニケーションツールの使われ方はその国や民族の「他者との関わり方」の風習に依存するというのは私の持論だが、日本人はTelecommunication、すなわち遠隔通信によるコミュニケーションを極めて苦手とする民族ではないかと思う。外資も含めて様々な企業でテレコム製品を扱ってきた一エンジニアとしての私見だ。コミュニケーションツールだけを媒介にして、はたして良い仕事のできる良いチームを作れるのかどうか・・・